敬愛するドラマー001:Brian Blade
福島が敬愛して止まない素晴らしいドラマー達を紹介していきたい。
紹介するのは、ドラム地球代表のようなワールドクラスドラマーばかりで、当然ながら彼らの前では福島も一人のドラム少年にすぎない。音楽の道に果てはない。レッスンなんてさせて貰ってるわけだが、もちろん福島も挑戦者だ。そんな気持ちで書きたい。みんな、一緒に練習しようぜ。
楽器が声に聴こえる
楽器を自分の声のように操る人たち達がいる。楽器の種類は問わない、サックスでもトランペットでもピアノでも、もちろんドラムでも。彼らを称賛する言葉として、「唄っている」がある。「唄っている」という褒め言葉は音楽界においては極上の評価だ。
さぁBrian Blade氏である。ドラムはリズム楽器だなんて誰が言ったのか、氏のドラミングはまるで鼻歌を唄っているように聴こえる。ドラムをたくさん並べるようなセッティングはせず、オーソドックスな3タムドラムセットにシンバル3枚のセッティングだが、そこから繰り出される音色は何千か、何万か。
アドリブだからこそ成される超展開
特筆すべきはその耳、インタープレイの爆発力である。ジャズドラムはその8-9割がアドリブで演奏されるが、氏はまるでアンサンブル上の火器管制レーダーのようで、全ての楽器の音を完全に耳で認識し、プレイ上のどこからも導火線にしてしまって、異次元の緊張と開放を作り上げる。最高にメロディアスで音楽に寄り添っていて、爆発的なダイナミクスと圧倒的なフレージングで、ソリストのプレイを増幅させる最高のアンプでもある。
こればかりは聴いてしまったほうが早い。
たった10分でも人生が変わってしまうかもしれないので、どうか騙されたと思って上記の動画をご覧頂きたいと思う。芸術鑑賞として必ず実用に耐えうる。
このシンバルやタム達の音色の美しさ!!有機的で振れ幅に富み、透き通るようである。こんな音色でドラムを演奏できれば、複雑なことは何一つしなくても最高の演奏になるだろうなと思う。煩さとは全くの無縁だ。
展開としては、ド派手なダイナミクスの応酬に耳がいきがちだが、5:55-あたりからの極端に静かな展開から、ゆったりと熱を帯びていく展開の作り方!!目の前で聴いていたら気絶する自信がある。
もう1つ、氏がいかにメロディーを唄っているかを体感できる動画。
これは氏の若かりし日の有名なドラムソロ動画。動画の冒頭~1分42秒あたり。伝説級のドラムソロとして名高い、まさに唄っているドラムのお手本である。シンプルなリフの中で演奏されるドラムソロだが、フレーズの発着、そして文脈が見事にリフに寄り添い、音楽として一つになっている。我々ドラマーは、覚えたフレーズ、覚えた技を並べがちだが、この動画はそれを諌めてくれる。
活動バンド、代表作
最初の動画は、Brian Blade氏がリーダーである"Brian Blade Fellowship"によるパフォーマンス。このバンドで5作ほどアルバムを発売しているが、全て満塁ホームラン級のアルバムだ。現代ジャズが好きな方にはたまらない。
また、氏は若かりしからJoshua Redmanカルテットの一員で、00年代には一世を風靡したアルバム達を氏の名義から発掘できる。Joshua Redman カルテットのSpirit Of The Moment: Live At The Village Vanguardはストレート・アヘッドジャズの金字塔として名高い。色々な配信サービスで公開されている超有名盤で、探すことは容易い。Brian Blade氏の超絶ドラミングを堪能できる。
氏は2022年現在で52歳。多くのジャズの名盤は、既に亡くなられたジャイアント達によるものが多いが、Brian Blade氏はまだまだこれから数多くの名盤を世に発してくれる。最高だ。絶対に見逃せないドラマーの一人だ。

